buq’s blog

覚えておきたいけど覚えておけなさそうなことを書きます?

有限生成錐 ↔ 多面体的錐の証明

有限生成錐は多面体的錐であり,逆も成り立つ,という定理がある.(p.77, 線形代数II 室田+杉原, 丸善出版

基礎系 数学 線形代数II (東京大学工学教程)

基礎系 数学 線形代数II (東京大学工学教程)

この証明は読みやすいものであるが,後で自分で再現できる自信がなく,いつでも再現できそうな証明を作った. 双対錐を考えることで見通しが良い証明になった気がします.

質問,指摘など歓迎します.

定理

  1. 任意の行列  A について,ベクトルの有限集合  D が存在して  \{x : Ax \geq 0\} = \text{cone}(D)
  2. 任意のベクトルの有限集合  D について,行列  A が存在して  \{x : Ax \geq 0\} = \text{cone}(D)

ここで  \text{cone}(X) はベクトルの集合 X を含む最小の凸錐.

証明

2 は Fourier–Motzkin elimination - Wikipedia, the free encyclopedia を用いればOK.

1 を示す.任意の多面体的錐の双対錐が有限生成であることをいえばOK.(∵ これが示されれば,2. とあわせて双対錐が多面体的だといえる.したがって双対錐の双対錐(多面体的錐は閉凸錐であるので元の錐と一致する)が有限生成だと言える.)

 A^\topの列ベクトル集合が生成する閉凸錐も  \text{cone}(A^\top) と書くことにする. また注目する錐を K = \{x : Ax \geq 0\} とする. K^* = \text{cone}(A^\top) を言えれば十分. これは( K, \text{cone}(A^\top)が閉凸錐であるから)  K = \text{cone}(A^\top)^* と同値であるので,これを示す.

まず  K \subseteq \text{cone}(A^\top)^* を示す. x \in K つまり  Ax \geq 0 とする.  \text{cone}(A^\top) の任意の元  y = A^\top b, b\geq 0内積をとると  y^\top x = b^\top (A x) \geq 0.従って  x \in \text{cone}(A^\top)^*

つぎに  K \supseteq \text{cone}(A^\top)^*を示す.  x \text{cone}(A^\top)^* の元とする.任意の b \geq 0 について  x^\top A^\top b \geq 0.特に任意の  i \in I IA の行集合)について  x^\top A^\top e_i \geq 0 e_i は標準基底の元). したがって  x^\top A^\top \geq 0 であり, x \in K